集中豪雨のことは全国のテレビや新聞で大きく報じられ、SNS上でも被害の状況がリアルタイムで流れた。
昔からよく知っているホテル・旅館が浸水した様を見た時はショックだった。
心乃間間の場所では幸い土砂崩れもなく、工事中の建物には何の被害もなかったが、
大雨の影響で掘削中の地中に水が入り込んでしまった。
今まで掘っていた穴は崩れてしまい、そこから大量の水が溢れ出ている。
またふりだしに戻った。
しかも水が収まるまで掘削再開できない。
このままだと建物の工期にも影響が出てしまう。
「温泉は諦めるか・・・」
温泉旅館としてオープンするはずの地に温泉が出ない。
致命的だが、計画全体の方針を転換する覚悟を決めていた。
しかし、掘削を依頼していた業者からは、「最後までやらせて欲しい」と申し出があった。
そのプロ根性と熱意が嬉しく、ワタクシもできれば皆さんの苦労を無駄にはしたくなかった。
その時点でどのくらい可能性があったのかわからないが、
掘削中断の要因だった水の流出が収まると、一縷の望みを託す思いで掘削の再開を決意した。
温泉の工期が延びるため、建物の工期も現場会議で細かく調整した。
オープン日も確定できず延期となり、色んな方々に御迷惑をおかけしたが、中途半端なままオープンはできない。
「妥協」という言葉は自分の中で禁句としていた。
日差しの強い真夏の猛暑日も、シンシンと降る雪に手が震える日も、
毎日根気よく作業を続けてもらった。
そしてその年が明ける直前、かかってきた一本の電話にワタクシは飛び上がって喜んだ。
「目標の600メートルに達しました!」
(続く・・・)
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旅館 心乃間間 館主 藤江甚午
館主 : 旅館 心乃間間
熊本駅前にて大正13年から続く「藤江旅館」の5代目。
2008年には九州新幹線開通に伴う道路拡張工事の影響で、熊本駅前での営業を一時休業。
約5年かけて、阿蘇山を一望できる新天地<南阿蘇久木野>にて温泉旅館「心乃間間~konomama~」をオープン。
趣味は旅行、グルメ、アニメ、漫画、バイク(2008FXDL)でソロツー。
好きな食べ物はラーメン、鶏刺し、ホルモン系。
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