温泉話③

さっそく現場に駆けつけた。

散らばっていた器具や配管はほとんど片付けられ、櫓の解体も進んでいるのを見て、

長かった掘削工事が無事に終わったことを改めて実感した。

 

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担当者から説明があった。

「温度は大体40度強、炭酸泉のようだ。」

 

炭酸泉と言っても、サイダーのようにシュワシュワしているわけでななく、

わずかに気泡が見られる程度。

浴槽に貯めた時点で消えてしまうだろう。

だが、感触はヌルッとして気持ちいい。

早く入浴してみたかったが、まだ建物どころか貯める浴槽も出来上がっていない。

生まれたての温泉を味わうのはもう少し先の話だった。

出てきた温泉は成分検査にまわされ、検査結果を心待ちにした。

 

 

こうして生まれた心乃間間の温泉は、おかげさまでお客様にご好評をいただいている。

他の温泉旅館のオーナーから、こういう話をよく聞いていた。

「温泉はほんと気まぐれ。お客様の多い時に限ってトラブルが起きる。」

心乃間間の温泉も、今まで数回トラブルに見舞われた。

それもほとんどが満室の日である。

 

オープン当初は、湧出量に見合わない量を無理して使い、その度に源泉が止まっていた。

今ではもちろんそのような使い方はせず、毎日使用量を管理している。

手間はかかるが、温泉のバルブ操作は全部手動で行う。

当館だけでなく、温泉を掛け流しで使用している宿のほとんどがそうだと思う。

どんなに技術が進んでも、自然を扱う部分はまだ機械には任せられない。

 

温泉というものは自然の「いきもの」だと思っている。

日によって量も温度も微妙に違う。

大切に大切に使わなければ、枯れて無くなってしまう可能性もある。

自然の恵みに日々感謝しながら、これからも温泉と付き合っていきたいと思う。

 

(・・・終わり)

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旅館 心乃間間 館主 藤江甚午

熊本駅前にて大正13年から続く「藤江旅館」の5代目。 2008年には九州新幹線開通に伴う道路拡張工事の影響で、熊本駅前での営業を一時休業。 約5年かけて、阿蘇山を一望できる新天地<南阿蘇久木野>にて温泉旅館「心乃間間~konomama~」をオープン。 趣味は旅行、グルメ、アニメ、漫画、バイク(2008FXDL)でソロツー。 好きな食べ物はラーメン、鶏刺し、ホルモン系。
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