さっそく現場に駆けつけた。
散らばっていた器具や配管はほとんど片付けられ、櫓の解体も進んでいるのを見て、
長かった掘削工事が無事に終わったことを改めて実感した。
担当者から説明があった。
「温度は大体40度強、炭酸泉のようだ。」
炭酸泉と言っても、サイダーのようにシュワシュワしているわけでななく、
わずかに気泡が見られる程度。
浴槽に貯めた時点で消えてしまうだろう。
だが、感触はヌルッとして気持ちいい。
早く入浴してみたかったが、まだ建物どころか貯める浴槽も出来上がっていない。
生まれたての温泉を味わうのはもう少し先の話だった。
出てきた温泉は成分検査にまわされ、検査結果を心待ちにした。
こうして生まれた心乃間間の温泉は、おかげさまでお客様にご好評をいただいている。
他の温泉旅館のオーナーから、こういう話をよく聞いていた。
「温泉はほんと気まぐれ。お客様の多い時に限ってトラブルが起きる。」
心乃間間の温泉も、今まで数回トラブルに見舞われた。
それもほとんどが満室の日である。
オープン当初は、湧出量に見合わない量を無理して使い、その度に源泉が止まっていた。
今ではもちろんそのような使い方はせず、毎日使用量を管理している。
手間はかかるが、温泉のバルブ操作は全部手動で行う。
当館だけでなく、温泉を掛け流しで使用している宿のほとんどがそうだと思う。
どんなに技術が進んでも、自然を扱う部分はまだ機械には任せられない。
温泉というものは自然の「いきもの」だと思っている。
日によって量も温度も微妙に違う。
大切に大切に使わなければ、枯れて無くなってしまう可能性もある。
自然の恵みに日々感謝しながら、これからも温泉と付き合っていきたいと思う。
(・・・終わり)
The following two tabs change content below.
旅館 心乃間間 館主 藤江甚午
館主 : 旅館 心乃間間
熊本駅前にて大正13年から続く「藤江旅館」の5代目。
2008年には九州新幹線開通に伴う道路拡張工事の影響で、熊本駅前での営業を一時休業。
約5年かけて、阿蘇山を一望できる新天地<南阿蘇久木野>にて温泉旅館「心乃間間~konomama~」をオープン。
趣味は旅行、グルメ、アニメ、漫画、バイク(2008FXDL)でソロツー。
好きな食べ物はラーメン、鶏刺し、ホルモン系。
最新記事 by 旅館 心乃間間 館主 藤江甚午 (全て見る)
- 上天草市×南阿蘇村の宿泊キャンペーンのお知らせ - 2024年10月15日
- 人吉温泉 石野乃湯 ICHIFUJI RYOKAN - 2024年10月12日
- 台風10号の接近に伴うキャンセルについて - 2024年8月27日