緑茶割り

今から約15年前、一人暮らしをしていた県外から実家へ戻り、

家業である熊本駅前の旅館で仕事を手伝い始めて間もない頃。

近所のあまり目立たない路地に小さな洋服屋がオープンしました。

 

その店のオーナーKさんは、ワタクシより10歳位年上でしたが、

見た目は年齢よりもかなり若く、物優しい顔つきで着ている洋服もオシャレ。

愛車のJEEPを乗りこなす姿がとてもかっこ良かったのを覚えています。

 

「買わなくていいから、また喋りにおいで!」

 

気さくな人柄に惹かれ、ワタクシは買い物もしないくせにその店に通いつめ、

その度にKさんはワタクシとの駄話に付き合ってくれていました。

 

Kさんは、店に来る人に対して「洋服の売り込み」をほとんどしない人でした。

その店に行くと、Kさんの好きな音楽がかかっていて、好きな車の話をして、

たまに洋服の話もして、仲良くなって皆で飲みに行ったりする。

そこは確かに洋服屋でしたが、「洋服を買う」ということ以外にも目的があり、

自然と人が集まる場所になっていました。

 

そんな調子なので、Kさんの店ではほとんど買い物をした記憶がありませんが、

一度ワタクシが「身長が低い体型に合う洋服がなかなか無い」という話をした数日後に、

「これはいいんじゃない?」と、小さめのジャケットを探してきてくれたことがありました。

なんだか嬉しくて、そのジャケットとブーツをセットで買いました。

その洋服がとても気に入ったとか、そういうことではなく、

その時はとにかく、「Kさんから洋服を買いたかった」のです。

 

新しいジャケットとブーツを履いてKさんと一緒に飲みに行くのを楽しみにしていましたが、

店はその後すぐ閉店となりました。

洋服を売ることより、店に来た人を楽しませることばかりしてましたから、

あまり儲からなかったのかもしれません。

 

Kさんとはそれ以来会っていませんが、今もどこかで「買わなくていいから!」とか言いながら、

”儲からない店”を楽しくやっているのかもしれません。。

 

 

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・・・先日、心乃間間にお泊まりのお客様が焼酎を緑茶で割って飲まれているのを見て、Kさんの事をふと思い出しました。

Kさんは芋焼酎の緑茶割りが大好きでした。

懐かしく思い、早速その晩、芋焼酎を買ってきて緑茶で割って飲んでみました。

 

「美味しいけど、普通にお湯割りやロックで飲んだほうが美味しいな。。」

 

そう思いながらも、懐かしさを感じながら緑茶割りをグイグイ飲みました。

その日は結構な量を飲んだにもかかわらず、翌日は二日酔いの気配もなく、

朝からなんだかとても良い気分でした。

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旅館 心乃間間 館主 藤江甚午

熊本駅前にて大正13年から続く「藤江旅館」の5代目。 2008年には九州新幹線開通に伴う道路拡張工事の影響で、熊本駅前での営業を一時休業。 約5年かけて、阿蘇山を一望できる新天地<南阿蘇久木野>にて温泉旅館「心乃間間~konomama~」をオープン。 趣味は旅行、グルメ、アニメ、漫画、バイク(2008FXDL)でソロツー。 好きな食べ物はラーメン、鶏刺し、ホルモン系。
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